國家は私達から、乙女の夢まで、取上げてしまふのでせうか。

鈴木清順

近所のビデオ屋に「野獣の青春」のDVDがあったので借りる。
小林昭二がサディストでムチ振り回したりする。ウルトラマンの隊長がそんなことをしてしまうので
初めて観た時はちょっとショックだった。それはウソ。もう大人だったし。
ただそのシーンではそれよりも窓の外が黄色い砂塵吹きすさぶ草原というか荒野のようなのがお気に入り。
渡辺美佐子がすばらしい。
ロケが多い。ロケ場所がどこなんだか逐一気になる。
音楽がカッコイイ。当時のこととてジャズっぽいやつなんだけど、そいつがいいんだな。
映画館のスクリーンの真裏にヤクザの事務所があるんだが、そこでは上映中の映画が映る。
いくつか出て来るそれらの映画のタイトルが知りたい。
「野獣の青春」に関しては小林信彦鈴木清順のスタイルがこの作品で完成したとか
なんとか書いてたのをいつも思い出す。まだ63年だというのにその雰囲気はまるでサイケデリック。
出来ればこれ以前の作品が観たいが中々に機会がない。
何年か前に日テレの深夜にいくつか鈴木清順の初期作品を特集してやっていたことがあった。
それはたぶんマイク水野の手配によるものだとおれは推察している。
そこでは「影なき声」だけ観た。原作が松本清張というちょいと考えがたい組み合わせで、
けどこの頃はまだハジけてないのでちゃんとまともなつくりだった。おもしろかった。
で、BSとかだと観れるのかも知れないが、うちにはそんなものがない。
20年近く前に昼間、邦画の放映番組があり、その時に「百万弗を叩き出せ」「俺に賭けた奴ら」
2日続けてやっていて、内容的には双方とも拳闘映画で似たような話だったのだが、「百万弗〜」がごく真っ当な
娯楽拳闘映画だったのに比してほぼ同じ話の「俺に〜」の方はなんだか途中から
おかしな具合になってきて、皆さん御馴染みの鈴木清順ワールドに突入してしまうのだった。
あれはいい見物だった。同じ話なのにまともなのとぜんぜんそうじゃないのと見比べられて。