國家は私達から、乙女の夢まで、取上げてしまふのでせうか。

はてなダイヤラーが選ぶサマーソング100選

太陽を待ちながら

太陽を待ちながら


● ドアーズ 『Summer's almost gone』
おれの知ってるRO(「ロッキング・オン」)は渋谷陽一松村雄策岩谷宏橘川幸夫id:metakit
の4人が中心にやってるやつで、もうそれは70年代のことだ。いまどき話題になり名前が上る際の
それとは中身も性格も違う。大体メジャーじゃないし、ある時期までミュージシャンへの
インタヴューってのはなかったし(初めてインタヴューらしきものが載ったのはイギリスの
「サウンズ」誌と契約して、そこに所載のものの翻訳だったんじゃないだろうかしら。
確かめたいがなにせ去年、うちの母親に当時のROのバックナンバーを捨てられてしまい、
どーにもならない。悲しい限り。)、影響力といって些細なもんだったし(現在に至る潜在的なものは
ともかく。元RO読者というのは業界〔音楽に限らず〕関係者に多数いると思われる)、広告も
大してないし、そして邦楽に関しては殆ど話に出ることはなかった(演歌とニューミュージック全盛で、
「ロック」といえば自動的に洋楽のそれを指していた時代)。LPとシングル盤しかなく、
エアチェックという言葉がまだまだ有効でFM局がまだ関東あたりだとNHKとFM東京しかなかった時代の話。
洋楽好きがまだFEN(進駐軍放送)のトップ40を聞いていた頃。考えてみればあの頃、ジム・モリソンが
死んでまだ10年経ってなかったんだ。なんか不思議だ。そう考えてみると。
その頃のROに時折松村(雄策)さんがドアーズについて書いていた。まだドアーズ、今ほど再評価、
というか古典化してはいなかった。時間経ってないし。いや、ふつうに「ハートに火をつけて」は
ラジオとかでよくかかったりはしてたけどさ。なんつうか、懐メロでもあったし、ゴッドファーザーという
感じではなかったよ。少なくとも。「Rolling Stone」誌での評価なんか《 若気の至り、青年期の熱病 》
てな言いまわしだったりしたくらいだ。確かにそういう面もあるが、もちろんそこがまたいいところ。
で、ドアーズというといつも思い出すのが、NHKのドキュメンタリーで村上龍("Ryu's Bar"の
無口なマスター)を採り上げた番組があって、当時彼はまだ気鋭の新人て感じだったし、
そういう脈絡で、そこで村上龍は「ハートに火をつけて」に合わせてドラムを叩いていたのだった
(たぶん、だ。テキトーな記憶)。
さて、松村さんに戻らなきゃ。
そのドアーズに関する文章で3枚目のアルバム「太陽を待ちながら」(原題:"Waiting for the Sun")
(しばらく前、話題になったJay-Zのアルバム"The Blueprint"NASをディスった曲、
"Takeover"で、この「太陽〜」から"Five to One"がサンプルされている)所収の2曲、ちょうど
メドレーかと思いもするような構成にもなっている"Summer's almost gone""Wintertime Love"について
書いていたことがあった(それについては松村さんの本に収録もされているので、今でも読むのは
簡単なはずだし、ある意味クラシックといってもよい書き物だろう)。それに触発されてだと思う、
渋谷陽一も自分のラジオ番組で何度かその流れのまま2曲をかけたことがあったりもした。
ともかくもその文章は印象的で、ただでさえいい曲、いい流れであったその2曲の意味を補完し、
支え、焦点を充て、件の文章共々、クラシックになったのだった。

そして、夏。
今年の夏は酷暑であったという。(8月後半はあんなにも寒かったが。)しかし、夏の暑さというのが
全くに堪えないおれにはなんともなかった。夏、暑いのあたり前じゃん、としか思えないんだもん。
毎年。つうかむしろ暑ければ暑いほどに嬉しいばかり。欣喜雀躍、暑さ歓迎ウェルカム。暑い陽射しを
浴びていると、なんか気持ちよくありませんか?肌がホカホカして来て。頭がぼんやりしてくるのも
いい感じ。だからそんな夏はなんだか常にうれしいような気がして、いいことがありそうなんだけど、
かつての夏はいつでもただ暑いだけで、予感、じゃなく、ありえないようなことばかり夢想して、
といって大したことでもなく、ともだちとどこかへ遊びにゆきたい、海へゆきたい、女の子とでも
知り合いたいとかなんとか他愛もない、誰しもが思うようなことだったけれど、でも大概の場合、
ハナからともだちさえいたためしがなく、いっしょに遊びにゆくどころか、おしゃべりさえ滅多に
あるもんじゃなかった、ので、せいぜいが冷房効いた映画館へ。そんで映画の中じゃあともだちと
友情育んだり、ひと夏の経験しちゃったりの暑い夏が展開されてたりな。観てるおれはぜんぜん
関係ないのな。けどまあ、ありがたいことに、いつしか海にゆく機会もあったし、そうだ、
フジロックへも行ったりしたんだ、だからまあいいじゃあないか。夢は叶う。叶ってしまった。
あとは余生とばかりに過ごしてゆく、と思いつつも人間、そうは悟れるものでもなし、欲望は毎日
24時間稼働中、春夏秋冬、ミルク飲んでる赤ちゃんから始まって、更に思春期過ぎれば、困ったことに
性欲ってやつともつきあってかなきゃなんなくなる。まことに厄介千万、
夏夏夏ココナッツ/アイアイアイアイアイランド♪デュエット曲の定番を歌う間もなく日は暮れて、
気がつけばもう夏が終わる、結果、Summer's almost gone ♪と相手もなくひとり口づさむばかり。
夏はいつでも期待に満ちて、そう多分、あの長かった、確かに楽しいこともあっただろう、
小学校の夏休みをきっと思っているんだ、いつまでも。若いっていいネ。でも大丈夫さ、中途半端な
秋なんかいっそのことさっさと過ぎれば、やがては冬の恋、
Wintertime Love ♪がきっと待っているに違いないんだから。

てなわけで(ビートたけしオールナイトニッポンに於ける常套句)、
次をid:blackmovieさんにフリたいと思いますが、バトン、どーでしょう?