國家は私達から、乙女の夢まで、取上げてしまふのでせうか。

小津安二郎

「浮草」を観る。
この前観た「宗方姉妹(むねかたきょうだい)」につづいて、雨が降り、女が殴られるのだった。
(これ、昔いっぺん観ているはずだけど、なんにも憶えてなかった。
それとも観た、ってのは気のせいだったんだろうか。ううん。
観たことはあると思うんだがなあ。もやもや。)
小津安二郎って、でも大人だなあ。ここには大人の愛憎が、そしてセックスがあるもんな。今更だが。
さっき観たばかりのせいもあって、それは濃密なものに思えた。家族という以上に男と女の話のようだった。
そしてまた久松静児も成瀬巳喜男も大人だ。
その点、溝口健二って、男女間の愛憎、セックスが観念的に思える。
それは多分に脚本の依田義賢にもよるが、溝口本人の意向、性向が結果として反映されてはいるだろう。
男と女、セックスをどう考えていいのかわかんなかったんじゃなかろうか。
自分なりの見解を出すに至らず、と。