國家は私達から、乙女の夢まで、取上げてしまふのでせうか。

エリック・ロメール

いつも行かない、会員証も持ってないビデオ屋に行ったら、なんと『緑の光線
(『エリック・ロメール・コレクション DVD-BOX V (満月の夜/緑の光線/友だちの恋人)』所収)があった。
早速会員証を作った。借りた。観た。
その店他にも『冬物語 [DVD]』もあったし、それになぜかフィリップ・ガレル
内なる傷痕 [DVD]』を始め4本もあった。あれま。
で、『内なる傷痕』も借りた。試しに少し観た。
他にも観たいのいくつかあって、これから暫くはヨーロッパ・モードに突入する。かも。
で、『緑の光線』、いろいろ言及したいことがありすぎて、片端から忘れた。
ともかく、よかったよ。
つうか、なんでいい歳したジジイがふつうのOLのバカンスの話なんだよ、
とか観てると、つい思ってしまい、それがなんともオカシク、いい引っ掛かりで、
結局観終わってみると、それがワナだったのが分り、ヤラレタと思ったが
騙されてるのがたのしいので合格。
つうか、まあ、魂胆としてはヤラシイわけよ。
なんでもないつまんないねーちゃんの話をつづけてって、最後には象徴的なトコに落とす、
なんていうのは。やり口がわざとらしい。でもそんなのは映画ならあたりまえだのクラッカー、
常套手段でなぜ悪い、いいじゃないか、幸せならば、つまりは映画として魅力的なので構わんゼ。
まったくそれもぶっきらぼうな撮り方してるし、ブツッと半端なところでシーンは切れるし、
でもそれもきっとわざとなんだよなあ、アレ?とか思わせて引きつける作戦と見た。
日付入りで、まるでOLさんの日記かよ、とはいえナレーションとかがあったりはしないが、
だせえとか思わせやがって、素直に騙されたよ。おれは。映画で騙されるのスキ。
一見投げやりに撮ったかに見せた、やたらと出て来る人間がベラベラベラベラ喋り捲る
会話シーンだって、実は相当の手練手管、演技の仕掛けの賜物、
ふつうドラマで見るそれとは違って、ほんとにだらだらとしゃべる連中、そこに流れるしらけた空気、
それは気がつくと、ああ、どうしよう、場がしらけてるよ、困った困ったと、
観てる側が本気で心配しちまって、主人公のOLさんについ、ヘンなねーちゃんだと
思っていたのがいつの間にやら肩入れしてる始末。
さりげないようでいて、実はちゃあんとドラマが進行しているのに気づくのは映画が
始まって結構経ってからだった。
2度ほど出て来る主人公がトランプを拾うカット、ここばかりはまるで取ってつけたようで、
でもそれがまた映画全体からすると見事に嵌ってるのが悔しいじゃないか。
緑の光線』はビデオ屋でも比較的見掛けることのあるロメール作品だし、公開当時の評判も
どことなく見覚えがあるし、これぐらいは観ておきたいなと前々から気になってた
もんだっただけに、ようやくこうして観られてスッキリした。
しかしフランスのビーチはあんな親子連れで来るようなところでも、トップレスなのか。
そこがまたいかにも「海水浴」ってことば似合いそうな、白浜とか御宿とかなんか
そんな風なとこと変わんない、雑然としたビーチで、そんな場所でトップレス。
ビーチクの嵐。(ってほどたくさん見えるわけでもないが。)
映画って、でもこんな撮り方、つなぎ方でも出来ちゃうんだなあ。
会話をだらだら、トランプ拾うカットの取ってつけた感じ、タイトルの「緑の光線」の由来を
これまた取ってつけたようにばあさん連中が主人公に聞こえよがしにだらだらと説明ゼリフ、
時折の自然描写のカット、そしてまた、たぶんなんでもないようでいて、
実は周到なのかも知らんが、技術的なことは疎いので判断に欠ける、昼間がまるで昼間、
それもバカンス・シーズンだから夏の昼間、そういや夜間のシーンてあったっけ?
ともかくも普段会話してるような場面でのただあたりまえに見える光線具合、キャメラ、
そんなこんなの組合せ、つぎはぎしてるみたいだのに、ぜんぜんいやじゃない、
引きつけられ、納得してしまう。キマリなんてあるようでない。
まあそれがヌーヴェル・ヴァーグたる所以なのやも知れぬが。
『内なる傷痕』はこれまたニコの『Desertshore』のPVの趣き、件のアルバムの好きな
おれにはうれしい限り、ただ字幕はヒドイ、それはともかく、象徴的なイメージ、
その解析はおれには出来ぬが、ただその青臭いのだけはよくわかる、いまおんなじようなこと
やられたらしらけること夥しいが、時代は1970年、そういうのんがぜんぜんOKな頃、
どことも知れぬ砂漠?あるいは海岸?山の中?で撮られたそれらの画面は実に魅力的、
つい見入ってしまうばかり。こういうのはまったく才能の賜物、余人の追随は許さない。
さて、エリック・ロメールに話は戻り、彼の映画観たら、これは是非おれもわたしもやってみたいと
みんなきっと思うよなあ。それでおれがこれまでに観た、これから観るであろう映画の数々、
きっとそのつもりで撮ったようなのが結構あるんだろうなあ。
その中には当然つまんない作品もきっといっぱい。