國家は私達から、乙女の夢まで、取上げてしまふのでせうか。

ことば

なにもない、なにも起きてないところでも、人がなにかしら言葉を口にすると途端にそれは発生し、そして増殖し始める。
ことばは時にたわいないおまじないにしか過ぎないのに、時にそれは力を持ち始め、元々、人の口から出た小さな発音にしか過ぎないのにも関わらず、人を引き摺りまわし始める。
大勢の人間の脳みそはそのことばに貫かれ、串刺しにされ、ゾンビ化する。なにせ元はおまじない、それが効力を持つと、ことばは人生に意味を与えてくれ、解決の予感を齎してくれるのだ。
ただし、ごく安易に。浅はかに。
間もなく底は割れるが、しかし、その頃にはもう既に取り返しのつかないことになっている。