國家は私達から、乙女の夢まで、取上げてしまふのでせうか。

不思議、大好き

難解な映画ってのは敬遠されがち、というか積極的にわるく云われる場合がよくあって、
おれ、そこんとこが理解できない。それこそ難解。
「難解」で「わけわかんない」のっておもしろくね?
惹き付けられない?気にならない?
そのわかんなさが、不思議な感じでよくネ?
わかんないのっておもしろくない?なくなくない?
おれ、昔、テレビ東京がまだ「東京12チャンネル」って言ってた時代に土曜の夜とかに
やってた邦画が好きだった。好きでよく観てた。そこでは今ではソフト化も不可能な
カルト映画としてつとに名高い「恐怖奇形人間」とかもふつうにやってたりもした
もんだったけど、そんなことはともかく、そこでは、小学生だったんだか、
中学生だったんだか、高校生かも、ともかくもそんなお年頃のおれには理解不能の
わけわかんない、難解な映画を幾つも観たもんだった。
それは「野良猫ロック セックスハンター」だったり「八月の濡れた砂
(これはしょっちゅうやってた。レイプシーンがあるからだと思う。
放送するのだってそういう理由だ。エロで視聴率稼ぎ。これは放映の度、観てたけど、
いっつも理解できなかった。どういう話なんだかさっぱりだった。青春なモラトリアムなんて
子供のおれにはまったくピンと来ないのだった。エロさえわかんなかった。
ズリネタでさえなかったなあ。これはたしか。)だったり「女囚さそり 第41雑居房」
(途中からどんどんおかしなことになっていって、書割りみたいなとこで舞台での
お芝居じみては来るし、ぜんぜん別世界に突入、みたいな展開になるけれども、
中学生のおれにはほんとまったく一体全体なにが起きてるのやら。)だったり
「セックスチェック 第二の性」(これもよくやってた。エロ。けど、これもぜんぜん
わかんなかったなあ。当時観てた時は。一体なんの話なんだか。
ずっと気になりつづけてて、もどかしい年月を送っては来たので、
大人になってからビデオであらためて観たら、スポ根ドラマなのね。それでようやく得心。
でも昔はこれ、ヘン過ぎて、わけわかんなかったよ。)だったり、
「音楽」(三島由紀夫原作、増村保造監督の映画だけど、これはわけわかんないというより、
なんかヘンな映画、ってのは当時でも理解できた。女の人がハサミを目の前で
チョキチョキと動かしてみせるようなシーンがあったはずで、そこだけ憶えてる。
でもそれって「気狂いピエロ」の真似ッコだとは大人になって分った次第。)だったり、
雁の寺」(これもなんだか話が飲み込めなかったなあ。)だったり、同じく川島雄三
「しとやかな獣」(これもなんとも不思議な雰囲気で、なにがどうしたのか、
当時理解できなかった。)だったり、なんだかその他いろいろあったとは思うけれども、
でも、おれ、全部好きだった。そのわけわかんなさが。だって不思議なんだもん。
そのふしぎな感じがなんともたまらんかった。おいしかった。
何度でも観たくなっちゃうのだった。ふしぎ。SFみたいっちゅうかさ。少しふしぎ、
じゃないけれど。でもさあ、理解できなくてもさあ、なんか雰囲気があるのはわかるじゃん。
なんかしら味わいがあるのはさ。ふつうのやつにはないようなそれがさ。
そんで好きだったさ。だからあれだよ、わかんない、理解できない、難解、っつって、
匙を投げちゃう人の気持ちがわかんない。そのわかんなさが、麻薬っぽくネ?
サイケデリックじゃない?ああこのまんま、このわけわかんなさをずっと味わっていたい、
とかって思わない?
おれ、あれだよ、大人になって、以上挙げたような映画とか観るとさ、
一から十までいちいちわけわかっちゃって、なんか残念だったよ。
だってあのふしぎっぽさはもう二度と味わえないんだぜ。
SFな感じ、サイケデリックにはもう出会えない。
ああなんてつまらない。大人なんてきらいだ。