國家は私達から、乙女の夢まで、取上げてしまふのでせうか。

ジュリー

リボルバー [DVD]

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「リボルバー」観た。ようやく観た。これでまたひとつ荷が下りた。
一時、藤田敏八まとめて観てた時もこれはなんとなく観ることもなく、
それよりずっと以前にこれがビデオ化された当時から、なんだかずっと気になっていて
でもだからこそ余計に意識してしまい(さしたる理由もないのに)
いつまで経っても観れないままに来てしまったのだった。
それが今日になってようやく。念願叶った。
今回、元はといえば例の阿久悠特集でジュリーを観たのがキッカケ。
ついにこれを観てみようと思い立ったのだ。
して結果は。
よかった。なんだか充実した2時間だったよ。
当然のことながらもっと昔に観といてもよかった。
1988年、もう既に国鉄はJRで、電話も黒いそれではないが、シャツはズボンにたくし込まれていた。
これはくたびれた、モラトリアムな、80年代の「野良犬」でした。
野良犬 [DVD]

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映画がいいので役者はみんなよいのだけれど、とりあえず挙げる、
小林克也がよかった。
ひとり公園かなんかで宅配のにいちゃんから奪ったピザ食って、なんか飲んで
タバコ喫って、あげく慌てて拳銃をゴミ箱に捨てたりするんだけど、
その一連の動作がなんともいえずよくて、あれって、どこまで演技つけてんのかなあ、
と気になった。あれは随分と素晴らしいと思う。
アドリブも入ってるのか、打合せをだいぶん重ねたのか。
表情も実によかった。
尾身としのりと柄本明の風来坊コンビもよかったしなあ。
ジュリーはもう既に太り始め、体型も顔立ちも往時のそれではないのだけれど、
しかしどこかやる気のない、生きるのに前向きとは云い難い警官の役は実に似合っていた。
そして手塚理美。
彼女、先日の「女王蜂」でも色っぽくてよかったが(最近役者業にだいぶん復帰していますな)
ここでもまた色気あってよかった。
昔、「ふぞろいの林檎たち」見ている頃は手塚理美をよいと思ったことはなかったけれど
いまはなんだかこの映画の若い彼女も充分いいし、「女王蜂」の熟女な彼女もよろしい。
お願いしたい、というやつだ。
惹かれる。ヤリたい。
バラバラな人たちのバラバラな日々がバラバラに描かれるのだけれど、
でも頭にスウッと入ってくるし、それぞれが観ていて自然に繋がる。
荒井晴彦の脚本がまずきっと見事なのだと思う。
それを更に捉えて、自分のものとして描く藤田敏八
とにかく、観ていて快いのだもの。快感。
映画観ている満足感が2時間継続する。
そうだ。音楽の入り方も適切でよかったなあ。
80年代風のハネるシンセはそれに相応しく鳴り、フュージョンぽいのも適宜、
最後の"I Shot the Sheriff"もきちんとハマっていたし、
それになにより、少年が喫茶店で男相手に拳銃構えるシーンで、店内BGMとして聞こえる
バッハかなんかのハープシコードの荘重な音楽もまたドンピシャリ。
しかも(あたりまえ)わざとらしくない。
いちいち全部いいや。
ビーチや街中の人ごみの捉え方も見事。
エキストラの配置やロケの仕方が適切なんだよなあ。たぶん。