國家は私達から、乙女の夢まで、取上げてしまふのでせうか。

姫野カオルコ

ああ正妻
(以前につづき、また思いつきの断片)
姫野カオルコ、長編のテーマは基本的に「性」なんだが、これはまた趣が違い、
実験小説という性格もまたあるせいか、「性」の部分はここでは一時休止、『ああ正妻』は経済小説とはなっている。
家庭と会社(といっても会社経営ではなく、そこで禄を食む者、つまりは個人の謂い)というミクロな経済をテーマにしている。
そしてまた、主人公の妻、雪穂は怪物かの描写にはなってはいるが、彼女の内面は秘されており、
それを推し量るのは、彼女とは特に関係のない第三者、川田教授である。
雪穂の内面には、しかし、きっと「性」がある。
つまりはそこへ分け入ってしまうと、またべつの話になってしまい、テーマも逸れてしまう。
つまりは今回はそれはお休み、という仕組み。
(あ。もっともらしいこと、いま云った。)
(こういうのはハッタリで、それをたのしむものなので、細かいことは言いっこなし、ってやつである。)