國家は私達から、乙女の夢まで、取上げてしまふのでせうか。

NANA(当然ネタバレしております)

サエコがすっごくよかった!
初めて「あ。カワイイ。」って思った。
ドラゴン桜」の時は役にはハマってるけど、特に好みでもないし、
アニメ声が苦手なので可もなく不可もなくだったんだけど、「NANA」観て開眼。
演技上手い!ほんとに、あの子、すごいわ。
ドラゴン桜」での彼女も、その演技力に依ってあの役柄が成り立ってるんだと認識を新たに。
いくつかあるエピソードの中で一番大谷健太郎監督らしく撮っているシーンでもあって、
それとも相俟ってのことでもあろうかと思う。
とにかくサエコ、これからもっと観たい。いい映画、ドラマに恵まれて欲しいなあ。
で、「NANA」は昨日観に行った。
朝、整形外科行って、電気治療と軽くマッサージを済ませるとそのままシネコンへ。
テケツだけあらかじめ買って、観るのは午後の回にでもしようかと思っていたが、
ちょうど劇場に着いたぐらいが第一回目の上映、そのまま勢いで観ることにした。
混んではいたが、意外といい席が獲れてラッキー。
NANA」、おれはとにかく大谷監督のファンなので満足満足。
終始うれしかったし、たのしかった。
でもどうなんだろ?原作のファンとか、あと劇場にいっぱいいた中高生の子たちには。
(まだぜんぜんよそ様の感想とか見に行ってない。まだしばらくは見るのは控えたい。
味わってたいんだよ。おれの中で。)
映画の出来としては欠点がいくつもあると思う。
ただおれは好きなんでなあ。大谷監督のすることなすこと、すべて。
中島美嘉の顔色がゴスメイクのせいばかりではなく終始薄暗いとか、演技がまるきりだとか、
成宮くんの演技もちょっと浮いてて、がんばりすぎちゃってるのがアダに
なってるんじゃないかとか、(でもそういったとこも含めおれは成宮くんが好きなので、
べつに構わないというか、好印象なんだけど)
ナナとハチ、二人の住む部屋のレイアウトや調度がそれほど活かされてないのは、
観てて間取りがもうひとつわからない、体感できないし、部屋の作りを活かしきる
大谷監督としては中途半端なんじゃないかとか、
でもなにしろ原作のある話なので消化すべきエピソードがいくつもあるが為に、
監督得意の、じっくりと見せる会話の妙などが出来ず、終始端折ってる感がしたりとか、
エピソードがばらばらに並んでいて焦点が定まらず、更に肝心のナナとハチが
それほどの印象を残さず、ほんの一挿話の登場人物であるサエコが一番輝いて見えたりとか
どちらかといえばもっと熱く煩いぐらいの話として展開した方が(原作は未読のおれだけど)
もっと「NANA」を語るには向いているような気もするのだが、大谷監督はむしろ
ストーリー重視というよりは静かにじっくりと人物の成り行きと感情の交錯を
描くかの人なので、原作ファンの若い子たちには若干退屈な映画にはなってやしないかと
余計な心配をしてしまったり(事実、「途中ねむくなっちゃった」なんて声が上映後、
おれの後ろの席から聞こえて来た)、なんだかすごくいやらしいこと書いてるけど、
いいのかおれはこれで、大谷監督のファンならば、そんなちゃっちいこと云うなよとかも思うが、
でも書いちゃったんだからしょうがない、で、さて、ナレーションもほぼ担当している
宮崎あおいの安定感のある演技とサエコ以外はみんな今回は大根かもとか、
いろいろあるが、さてお立会い、宮崎あおいファンに告ぐ!全員観ろ!
とにかくもう全編可愛いゾ!卑怯なぐらいカワイイ。
もう、髪型も着てるものも仕草も表情も、全部全部サービスカットに次ぐサービスカット!
エプロン姿で甲斐甲斐しく動いてたりするゾ!もうずるいぐらいにカワイイ!
あんなのないよなー。かわいすぎるよ。終始。
で、またさあ、彼女の着てるものが基本的にはビジュアル系好きな人の考える
「カワイイ」ファッションなのかとは思うんだが、そこに大谷監督の趣味のよさが
加わっているために、洗練されたそれになっていて、ヤンキー色が払拭され、
まるきりオシャレになっているのがミソ。もしかして、ヤンキー色のあまりのなさに
物足りなさを感じる人もいるかも知れない、などと心配もしてみる。
だってぜんぜん野暮ったくないんだもん。あとヘアスタイルね、これが決め手かとも思う。
ヘアメイクが見事。カワイイ上に美しくもある。
中島美嘉もその顔立ちとメイクのせいで損してるような気もするけれど、
でも最後の方にあるシーン、松田龍平とバラの花びら浮かせたバスタブでの
会話のシーンはよかった。風呂に入っているわけで、メイクもうっすらとした
素顔めいたそれになっていて、意外と幼い顔立ちの彼女(体躯も痩せているので
全体に少女っぽくも、そもそもある)の表情もよく、なんかジーンと来ちゃったなあ。
「事情あって擦違ってしまった男女が最後に和解する」という点では、
しかし従来通りの大谷映画なのでした。
終わる前にまだもう一度観に行きたいなあ。
欠点をあげつらってしまったけれど、でもそれでもこれ、いい映画なんだよ、
とおれが云うのはなんかヘンだが、でもおれは好きなんだよ。なにもかも。
欠点とも思われるようなところでさえ。
お仕着せの企画であって、監督の資質とは相容れない部分があるのは当然で、
そのズレが欠点とも見えるようになっているだけで、でもおれは全部好き。
大谷監督の映画らしければ、もうそれだけで、おれには魅力的。いい気分になれる。
最後、ハチは仲間たちに暖かく迎えられる。
本来なら自分らしく生きるとかなんとか暑苦しいメッセージにもなりかねない話の筈が
大谷健太郎の手に掛かるとあたたかみのある、善人しか出て来ない、
人々の気持ちが触れ合う世界がそこに現出する。
つまりおれはラスト、泣いてしまった、ってことでした。
また観返せば、つまらぬ感想など飛んでゆき、いくつものシーンを印象深く
思いだすことが出来るような気がする。
もっともっとちゃんと好きになりたい。
出来不出来とか、そんなことはほんとはどうだっていいんだから。
そうしていま頭の中に甦って来たのはナナがハチの実家に遊びにゆき二人でいるシーン。
もう一度観て、例えばそのシーンに打たれたい。