國家は私達から、乙女の夢まで、取上げてしまふのでせうか。

フットルース

「フットルース」をついに観た。やっと観た。「フラッシュダンス」なんかと
いっしょにしてはいけいないのだった。ちゃんと映画でした。
監督がハーバート・ロスだってのはいつも見逃してた。見えてたはずだけど、見えてなかった。
ハーバート・ロスはこれまた浪人中(だったと思う)にTVで
「グッバイガール」を観てすごくよかったんだ。あの時すごく感動したのをよく憶えてる。
脚本がなにせニール・サイモンなのでストーリーやセリフは実によく出来ているのだ。
中年男女のラブコメ。ラブコメに弱い。昔から弱い。「なんたって18歳!」の頃から弱い。
脇道に逸れたが、「フットルース」。音楽がちょっと安っぽいんだけど、
そこはそれ80年代ってことでカンベン、カンベン(心のこもらないチャラい言い方で)。
ビデオのパッケージやサントラの印象で軽い印象しかなくて今までずっと観る気にならなかったんだ。
今回は80年代を押えようキャンペーンの一環としてTSUTAYAの100円レンタルを期に
「フラッシュダンス」といっしょに借りたが、そうでもないと中々こういうのは観ない。
ケヴィン・ベーコンが当然だけど若くて、観てて気分がいい。また彼女役のロリ・シンガーが魅力的だった。
脚が長くて溌剌としてて、それでいて小さな町と父親に逆らいきれず、
でもいつかはこの町を出たいと思っている女の子、って役柄にピタリだった。
そして彼女の両親のジョン・リスゴーダイアン・ウィーストがよかった。
ああいう風に大人がちゃんと描かれているとホッとする。
さりげなくケヴィン・ベーコンに助言してくれるバイト先の上司、
ああいう人がいてくれると映画にいいアクセントになってうれしい。
そんな特別に名作ではないけど、いい映画でした。

  • BGM
    Masters at Work "The Tenth Anniversary Collection"
    (ハウスだ。4枚組みでしかも安かったので、たまにはこんなものをと以前買った。)
  • フットルース(みんなのレヴュー)見ると「話が単純」という感想が多い。不思議だ。
    おれは結構よく出来てる脚本だと思った。人物もひとりひとりちゃんと拾ってるし、
    アメリカの保守的な田舎町(白人しかいない)というのがどんな風か、カート・ヴォネガット
    スローターハウス5」は名作だとケヴィン・ベーコンが言うと皆が顔を顰(しか)める、
    最後の方には図書館から彼らが思う「有害図書」を焚書にかけるようなエピソードまである、
    青春映画であって、テーマはポリティカルでもある。
    この映画の脚本はニール・サイモンじゃないし、完璧ってわけには行かない
    かも知れないが、健闘してるんじゃないのか?
    少なくとも「フラッシュダンス」みたいな、企画が二転三転して、いくつものキャラクターや
    エピソードの断片がまとまりなくだらだら並んでて、結局曖昧でどうしたんだかよくわかんないけど、
    とりあえずエンディングが来ました、なんか上手く行ったみたいな(?)、
    それでいて随所にチンチンの勃たないエロと中途なMTVと空虚な歌詞の曲と
    ムダな会話とムダなラヴストーリーが散りばめられてるような箸にも棒にも引っ掛からないが、
    マーケティングだけは怠りないような映画なんかとは違うことだけは確かだ。
  • というわけで上記を書いてからポーリン・ケイルの「映画辛口案内」を見る。
    酷評だ。寄せ集めの継ぎはぎ、ダンスシーンがぜんぜんつまらん、
    一体いつの話?50年代?、ケヴィン・ベーコンがお上品過ぎ、その他その他。
    確かにそう。その点、おれは点が甘いからなあ。
    感じがよければあとはちょっと疑問に感じても目を瞑るのを旨としています。
    (いい方、いい方に考える、受取る、感動するように努める。)
    だって映画だもん。どうせバカらしいんだよ。
    その点、先日の「荒野のストレンジャー」のクリント・イーストウッド
    映画なんかみんなリアリティないもんばっかし。ハリボテの世界。御都合主義。そこが味。
    (ちなみにP・ケイルはいつもC・イーストウッドには点が厳しいです。)
    さて、おれはクリント・イーストウッドも好きだし、ポーリン・ケイルも好き、
    フットルース」もハーバート・ロスも好き。そんな感じ。