國家は私達から、乙女の夢まで、取上げてしまふのでせうか。

フランソワ・トリュフォー

asin:B0006B9ZLS』(『夜霧の恋人たち』)と『asin:B0006B9ZMC』(『逃げ去る恋』)を観る。
『夜霧の〜』はぜんぜんべつに夜霧なんか関係ないのだった。
たぶん裕次郎の『asin:B00009KM8J』(『夜霧よ今夜も有難う』)にあやかって、
アタりそうなタイトルってことでそんなことになったのだと憶測。
ロバート・レッドフォードの『夜霧のマンハッタン』⇒『asin:B0006HBM0Y
てのもあって、これまたややこしい。R・レッドフォードの方はどんな映画なんだか知らない。
でもきっと「夜霧」は関係ないよね。)
これで「アントワーヌ・ドワネル物」は全部観た事になるのかしら。
(『家庭』=『asin:B0006B9ZM2』は殆ど寝てたけどね。あん時はひどく疲れてたのに
無理して観てたのだ。ちょっと失敗。今度またちゃんと観なおしたい。)
しかしこうしてひと通り観て来るとやはりなんかしら愛着も湧いて来る。
ラスト、『逃げ去る恋』がちゃんとそれまでの集大成的なつくりになってもいたので、
感情移入もしやすく、しみじみとした気もなんとなくしてきて、それもよかった。
けど、『大人は判ってくれない』、それに『アントワーヌとコレット』もかな、
の2編に関してはそれ以降のドワネル物とはテーマが違うような気もするのだった。
その始めの2つに出て来るアントワーヌ君はまだ子供、せいぜい思春期程度で、
孤独で寂しい気配をなにより強く感じるんだもん。それ以降のはもう少し充足してる、
というか、既にちゃんと人生の中に入っていて、そこで悩んでいるように感じる。
大人は判ってくれない』では行き場所がどこにもないかのようだし、女といえばむしろ母親で、
そしてアントワーヌは正にその母親が「女」であることにより疎外されている。
けど『夜霧の恋人たち』その他での女性たちは基本的に彼を受け容れてくれていて、
彼自身も、転職を繰返しつつも、常に仕事には就いて、生活もまっとうしているし、
タイプライター盗んで、タバコ喫ってみせて大人のマネゴトなんかしているかつての彼では既にない。
これは映画業界に入り、しかもそこで成功し、ただ映画はアタったり、ハズれたり、評価されたり、
されなかったり、そして多くの女性たちと関係を持つようになったトリュフォー自身を
反映した結果なのだろう。きっと。そういう意味ではやはりドワネル物は自伝的ではあるのだ。
・・・などとたまには、ついついいやらしい物言いなどしてしまうのはきっと春の匂いに
誘われているせいに違いない。木の芽時には御用心。
そういえばジャン・ピエール・レオーって、保守的でいつも冴えないカッコで、
ぜんぜん60年代、70年代のナウなヤングっぽいといったことはないのだった。
ジーンズにTシャツ、みたいな格好はしないし。更にもっとファッショナブルな格好は、なおしない。
いつも地味なスーツとかよく着てる。(ような気がする。)
更にいえばトリュフォーの映画って、女の子は大してかわいくも見えないし、ファッションにも
惹かれるものがあまりないような気がしないでもない。
少なくともおねーちゃんを常に美人に撮ってしまうゴダールとは違う。
トリュフォーの映画観ててもあんまりおフランスに対する憧れは掻き立てられないのだった。
(・・・ような気がする。とりあえず。あとで訂正するかもね。)
あとトリュフォーメガネっ娘が好きらしい。
アメリカの夜』じゃナタリー・バイにメガネ掛けさせてるし、『逃げ去る恋』でも
メガネ掛けた女に惹かれるかのシーンもあった。
スピルバーグは両親が不和で、学歴もなく、映画業界に若年で潜り込んだところなんかが
トリュフォーにきっとシンパシーを感じるところだろうが、トリュフォーはただ、
カッコこそ冴えないが、女にはモテる、オンナ好きなので、その点では
スピルバーグとは大きく異なる。
『アントワーヌとコレット』の入ってるオムニバス映画『二十歳の恋』、観たいなあ。
特に石原慎太郎監督の日本編。
あとあれだ。今回の感想はちょっと愛情に欠けた、どこか殺伐とした感じがしないでもないのだが、
ほんとはもう少し映画に寄添った、細部や空気、感触をたのしむかのようなものが書きたかったよ。
(『逃げ去る恋』ではアントワーヌのガールフレンドはレコード屋に勤めてて、
ポール・サイモン、なんて名前も聞こえたし、『アントワーヌとコレット』じゃ
アントワーヌはレコードを作る工場で仕事してるし、『夜霧の恋人たち』『逃げ去る恋』、
そのどちらにも軟弱でポップな主題歌がついていて、それがよいし、トリュフォーと音楽って題もわるかない。)
そしてトリュフォーっておれにはまだ判り難くて、そのもどかしいような感じ、けど、
つづけて観ていると、もしかして好きかも知れない、いやわかんない、というかトリュフォー
一般人気の由来や如何に、ってのも気になるし、トリュフォー、おれには未だ解明かせぬ、
いや、それ以前の、探求することさえなかった、更に単に知らなかっただけの、謎だ。
で、もしかして、テキトーに言うのだが、ヌーヴェル・ヴァーグっつっても、こと、
ファッションということで言ったらば、ゴダールだけ図抜けてないか。
映画のつくりももちろんそうだが、出て来る女性の美人さ加減、衣装その他の趣味のよさ、
思わず憧れてしまうようなセンス、どれを取ってもゴダール、ピカイチなんじゃ?
つうか、フランス映画って一般にファッション、ださくないか。よく知らんが。思いつき。