國家は私達から、乙女の夢まで、取上げてしまふのでせうか。

ユーミン

今日の題はここ数日の倣いで荒井由実の曲だが、この「雨の街を」、ウォークマンなぞ
映画観に行く道中で着ける機会があったので、歌詞に耳を済ましてみたら、
なんとまあ、すげえ。感動した。なんだこの普遍性は。おれ好みで言うところの
「永遠を指し示す」って具合じゃないか。垣根の木戸の鍵を開けるようなごく日常的な、
もしかすると彼女の実家がそういうつくりなのかも知れない、そこに夜が開けるに連れ
消えゆく街の明かり、ミルク色の雨、そういったものが被さり、しかも歌い手は自分の
部屋の窓から、夜明けに夢想しているかのようで、実はそうではなく、どことも
知れずにいて、ただ確かなのはその孤独で、なお、誰かやさしく手を引いてくれる人を
待っているし、それは別れた恋人、まだ見ぬ恋人、あるいは自分自身かも知れず、
幾重にも重ねられた心象風景と、そして目に浮かぶ風景、双方が相俟って、聞き手の前に
大きな拡がりを与えてくれる。なんてこったい。あれまあ。こんなもんを知らずにいたとは。
ありがとう清水ミチコ。「タモリ倶楽部」であなたのユーミンを見なかったなら、
ぼくはいま、こうして荒井由実を再発見していませんでした。
ついでにジョン・ケージにも感謝、ってことになるな。タモリには今更に礼を言わない。