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- 作者: 野坂昭如
- 出版社/メーカー: 国書刊行会
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「骨餓身峠死人葛」(ほねがみとうげほとけのかずら)、「火垂るの墓」は共に野坂昭如の「兄と妹」モノ。
「火垂るの墓」、ばかな兄貴の話だ。世間との折り合い方を知らない。それで結局失ってしまう。愚かで他人事とは思えない。
戦争はやがて終わるし、それでも人生はつづいてしまう。生き延びてしまう。けどもうどうやって生きてゆけばよいのか、術(すべ)を知らない。
ユートピアは存在しないからやっぱユートピアなんだ。自分の頭の中にだけあって、それに囚われている間に現実に乗り遅れてしまう。(「現実に乗り遅れる」だなんて俗な表現も時には有効だ)自分だけ取り残されているのに気づくのは、それが実感として理解できるのはずっとずっと大人になってからで、だからその分、取り戻せない思いが胸を引き裂く。甘く暗い空洞が胸のあたりに広がる。それはもう閉じることはない。
こうしてポエムを書いて疼きをしばしたのしむ。それぐらいしか日々がない。すでにもう。