國家は私達から、乙女の夢まで、取上げてしまふのでせうか。

市川雷蔵

「忍びの者」は今回スルーしたが、昔々(すまん、また20年ほど前だ)、並木座で観た時、
あ、山本薩夫って、案外おもしろいかも知れないと思ったのだった。ストーリーしかないけど。
まったくなんの含みも余韻もないけど。紋切り型極まれり。でもそれがいいところ。山本薩夫って
日共向け、教訓臭くて野暮でだっさいってイメージしかなかったので、そんなわけで当時「忍びの者」を
観た時にちょっと見直したのだった。映画は評判はさておいて、現物観てからの判断。
そんで山本薩夫といえば今井正はセットだが、今井正も「純愛物語」の不良少女の蓮っ葉さと
感化院でのシュミーズ姿でのキャットファイトを見た際、これまたちょっと見直したことが
あったりもしました。
で、小学生の頃、石川達三の「金環食」という小説が流行り、山本薩夫が監督で映画化もされ、
その小説はおもしろく、映画はTVで観て、おもしろかったし、その映画は結構お気に入りだったなあ。
原作が好きだったしね。大体。小学生の頃は、おれ、社会派だったから。
山本薩夫といえばこの前観た「傷だらけの山河」、上記、堤康次郎か五島慶太あたり、どうも
堤の方らしいが、そういや父親が言ってたが、五島慶太、長野県は別所とか上田とかあの辺の
土地を買い占めて、そのうち私鉄を通すとかなんとか言ってたのが、ぜんぜんそんなことはやらず、
ある日、買った土地一通り売りに出しちゃってそれきり、とかいうことがあったらしい。
そういやそれっぽいエピソード、「傷だらけの山河」にも出て来た。
で、『弁天小僧』だが、いろいろと成り代わる主人公、それはつまり階級を瞬時偽るってことで、
これまた階級ってテーマがあるんだと今日の夕方気づいた。