國家は私達から、乙女の夢まで、取上げてしまふのでせうか。

親切なクムジャさん

親切なクムジャさん」観た。
コマーシャル・フィルムか、これは。
すげえよく出来てるけど、なんの感動もない。
アイディアがあって、上手い事仕上げてあって、それだけ。
へぇーって感心はするけど、なんの生々しさもない。コマーシャル向き。CMそのもの。
こんなの映画じゃない。映画ってのはもっと生々しいなにかだ。
もっと志の低い、安い映画でだって、もっと生々しいなにかがある。
でもここにはない。見事にない。完全デオドラント。無味無臭。無害千万。
すべてがほどよい限り。収まりがよく、ささくれは一切ない。ここには。
一生カンヌで賞でも獲ってろ。そんな感じ。
シン・シティ」だって時にCMみたいだったりもしたが、しかしあちらにはちゃんと
いつでもロバート・ロドリゲス自身がいた。「TAKESHIS'」だってだめな映画だけど、
でもタイトル通りに「たけし≒武」はいたし、どこにも隠れたりなんかぜんぜん
してなかった。それなのに「親切なクムジャさん」、監督はまったく安全なところにいて、
安心しきってるだけでしかない。生身がどこにもない。本人がどこにもいない。
(映画)「監督」って名称よりも(CM)「ディレクター」とか云うのが似合いそうな感じだ。
イ・ヨンエにあんなことやこんなことさせてます。
しかもどこもかも過剰で、行き過ぎてて笑えるとこまでやってみました」とか
そんなことが印刷してあるシールでも箱の上に貼ってあるかのようで、やはりパク・チャヌク
収まりがひたすらによくて、ウェルメイド。つまり、ほんとうには、はみ出していかない、
「過剰」というパッケージを見せられているかのよう。
ううん。やっぱおれには食い足りない。
でも題材とかはさあ、やっぱおもしろい(というか、観る前にいつも
「これはなんかおもしろいかも」と思わせるようなもんがあるのはたしか)ので、
又新作でもあったら観に行っちゃうんだよなあ。
でも観終わると、なんともまだるっこしい、物足りない気分にそのたびなる仕掛け。
前半のイ・ヨンエが色っぽいのはでもぜんぜん買えます。その点は充分にオススメ。
エロい。
イ・ヨンエに冷たい顔で罵られたい。
(あ。ちょっと勃起しちゃった。いまそんなとこ想像してたら。)
おれ、ああいう顔に弱い。壇ふみかしら。イメージ的に近いの。
そしてケーキ屋の名前が「ナルセ」だった。さっき風呂入ってる時に思い出した。
これってまさかもしかしてパク・チャヌク成瀬巳喜男が好きだってこと?
そんで更に「クムジャさん」に於けるイ・ヨンエには成瀬映画の女性像が
反映されてたりとか?特に高峰秀子、「浮雲」とかのイメージがとかってなことなの?
ええええ。どうなんでしょう?
とはいえ大体成瀬巳喜男のことじゃないかも知らんし。そもそもが。
つか、成瀬映画のヒロインの誰彼がもし反映されているのであるならば、
どの映画のどこいらとか知ってみたい。
そんな観てるわけでもなく、まして筋だのなんだの殆ど憶えてもいないので、
おれには見当がつかん。それ以前に成瀬巳喜男、関係ないかも知れないし。
でももし元ネタでもあるのならば知ってもみたい。それが人情。