國家は私達から、乙女の夢まで、取上げてしまふのでせうか。

仲 里依紗

昨日は午前中、降圧剤もらいに近所の内科行ってそれが済むとその足で今度は恒例の歯医者で歯磨き。歯磨き済んで家(うち)帰って来るとメシ食って(煮込みうどん)出かける。クルマでTSUTAYAまでDVD&CD返却。そのまま駅までゆき、ショッピングセンター内の駐車場にクルマ入れて、電車で新宿へ。ともかくお出かけがしたかったのです。用もないけど。時間が合えば「空気人形」観るつもりだったけど、時間が合わなかったんだ。でも。「空気人形」、地元のシネコンでやるかと思ってたら、なんかやんないし。「R15」がアダなんかなー?残念。都会まで映画観に行くの、億劫で。誰かといっしょとかならいいんだけどさ。ひとりじゃねー。
そいでタワレコちょっとだけ覗いて上記のごとく「bounce」手に入れるとさっさと池袋へ移動。「ねんりん家」のバームクーヘン買って、カフェ・デュ・モンドでアイスオレ飲むとこれまたささっと電車へ。ほんと、ただ都会へ出たかっただけ、用事もなく、といってぶらぶらと遅くまで過ごす元気もないし、なんか焦ってるしで、地元へちゃちゃっと移動。とりあえず都会へ出たシルシにケーキを買う、これでまあよいかな、と。
地元へと着くとワイン(めずらしく白、甲州ワイン)を買い、TSUTAYAに寄ってホイットニーやリル・ウェイン、アレサ・フランクリンの80年代のやつとか借り、帰宅の途へ。
そうして夜、「純喫茶磯辺」を観たんだけど、これがまあよかった。感動。こんな風で、こんないいと思わなかった。ホームドラマ、生きるのがあんまり上手とはいえない人たちの心の機微、ところを得た笑い、セツナクてやりきれなくて、それでもまだただ人生は続いて行って。
テクニカル(?)な面でもすべてしっくりと来てて、音楽の使い方も的確だし、シーンを切り上げるタイミングも潔く、説明的にだらだらもせず、余韻があり、悲しい場面の背景でひどくバカバカしいことが起こってるんだけど、でもちっともそれがわざとらしくなくて、とってつけたようじゃなくて、日々のやりきれなさを、生きてくばかばかしさとかなしさ、それがいっしょにあって、だから余計セツナクて、人はおろかで、でももうちょっとマシんなってもいいんじゃないかって思わせてもくれて。

純喫茶磯辺 [DVD]

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仲里依紗麻生久美子の元へと急ぐ場面、彼女の走る足が写り、さあ間に合うか、というところで、突然画面を見切る影があり、それがなんと自転車に乗った彼女の父親で、そこでの追いかけ役の彼女から父への切り替えのタイミング、意表をついて、ピッタシで、わーって思った。
仲 里依紗が母親のアパートへ行ったところもよかったなー。その部屋のたたずまい、陳腐な言い方しかできないんだけど、すごくリアルで、そして母親と娘の会話、母親は台所(?)に薄暗い中、立っていて、娘の方は明るい居間に座りアップで写り、その2人が会話をするんだけど、2人の対照的な切り返しもよく、さらにそのときの仲里依紗の表情、演技がほんとすばらしい。めちゃくちゃうまい。「うまい」って書いちゃうと味気ないんだけど、その娘の気持ちがほんとうに伝わって来て、もうなんだかたまらない。そうして会話するうち、母親が部屋へと入って来て、そのとき娘の前に座るためにカメラを横切るようになるんだけど、そうして母親がフレームインして来る、そのタイミング、娘が話を聞いてもらいたい、まさにそのときに、そうして母親が彼女の前へとちゃんと来るんだ。演出のテクニックと感情が一体化していて、そこはすごくよかった。いや、そこだけじゃなくて、そういった感情の機微と演出がピタリとあっている場面があちこち、ぜんたいと云ってもいいのかも知れない、感情を揺さぶられる。
起きる事件はよく考えると紋切り型なのかも知れないけど、でも映画観てると引き込まれて、事件が起こるたび、それはいつも意想外で、たとえば仲 里依紗が磯辺によく来る小説家(?)の部屋へ行ったときなんか、観ててほんとどきどきしちゃったよ。こわかった。
必要に応じたカメラワークと編集で、カットを割るべきところは割って、据え置きでじっくり撮るべきところはそうしてあって、父親が店で暴れるところはちゃんと手持ちカメラでアクションの妙と笑いがあって。
麻生久美子があり得ない大きさのどらやきを取り出して「これ、食べない?」って仲里依紗に訊いて、話をはじめるんだけど、そのばかばかしい大きさのどらやき、麻生久美子の同情すべきところはあるけれど、でもいい加減でしょーもなくもある人物、けして善人じゃない、だけど人間なんてどのみちそんな風で、だめだからって切り捨てるなんて単純なはなしなんかなくて、そのどらやきがほんとうにその場面には効いてるんだ。笑っちゃうけど泣いちゃうし、ああもぉとか思うけど愛しくて。
出てくる人、演技がみんなすばらしい。父親役の宮迫博之も母親役の濱田マリも、誰もかれも、ほんの端役、「とりあえずビール」って云ってるガイジン4人でさえも。
なんだかすごくトクした気分がするよ。こういうの観ると。いいもん観たなーってつくづく思える。