國家は私達から、乙女の夢まで、取上げてしまふのでせうか。

市川雷蔵

弁天小僧 [DVD]』の感想とか、もっと微に入り細を穿って書いてもみたいが、残念、
殆ど忘れた。観た端から忘れる。記憶力には欠けるのでけしてオタクにはなれない。
それに文章綴ろうにも端緒が摑めない。ただ観てて気になったのは弁天小僧の性格で、
ぜんぜん悪人なんだ。こいつが。娘に優しげに振舞うのかと思いきや、酷薄に犯そうとするし。
なのに最後には彼奴に観客のおれたちは泣かされてしまう。
あともうひとつ、善悪と階級の絡み。これが今の感覚からだともうひとつ不思議な気もしたのだ。
悪い奴ら、彼等は小さな犯罪組織を為している、はそれでまたひとつの階級であって、
そこからは脱け出すことはありえない。それ故に悲劇にもなる。また権威に存外弱い。
一方でひとつの階級なりの矜持ってもんがあり、そのプライドと彼等を追い詰める権威の有り様、
そしてまた彼等が下層階級であり、そこからはけして脱け出せぬことが相俟って、大きく運命的な
悲劇にも見えたような気がしたのだ。弁天小僧にあるのはけして青年の呻吟ではなくして、
人間であることの不幸にも見えたのだ。(ここらへん言葉の調子に乗って書いてるだけであって、
自分でも言ってる事が疑わしい。大体文章の体を為しているのかどうかの判断もついてない。
テニヲハくらいはあってて欲しいが、それもどうかは知らぬ存ぜぬを押し通すことにする。)