國家は私達から、乙女の夢まで、取上げてしまふのでせうか。

約三十の嘘

詐欺師たちのバックステージ物。
さっきモーニングショーで観て来た。
なんだいいじゃん。これ。好き。
あれですな、人の風評ってのは参考程度にしといて自分で確かめないとだめだな。やっぱ。
第一映画なんか好みとか、そういうのもあるし、自分の見所と他人のそれとじゃ違う場合も多々。
あとおれは映画は出来れば採点方式じゃなく観たいと最近特に思うのでな。
脚本何点、撮影何点、演技何点、美術何点、演出何点、等々の結果、マイナスが
多いからこの映画はアウト、みたいのはおれとしては避けたい方針。
そんなの味気ないもの。第一。それに採点なんてアルバイトだって出来るんだし。
それよか自分にとってどうだったかがミソ。プラスアルファのあるやなしや。
(まあ、マイナスの場合もあるか。要はテキトーでいいじゃないかってトコ。
採点を厳密に避けるって意味じゃないゼ。そうすることだってあるさ。もちろん。
ただそれだけじゃつまんないじゃん、てこと。イイとこ取り逃しちゃうみたいで。)
(なんつっても70年代のRO育ち、採点方式のミュージック・マガジンは敵ですから。)
で、観に行ってよかった。観てて楽しかったし、観終わって気持ちよかった。
妻夫木くんが素の俺様キャラに近いかな。今回。まあ、愚図々々はしてるんだけど。相変わらず。
八嶋智人は例に依ってあの調子で、ああまたか、ってところだけど、べつにいてもいいかな、
って思えるし、なら上等ってもんだ。
彼は「ココリコミラクル」でも一番浮いてて邪魔かなって思うこともないじゃないけど、
でもまあいてもいいかとも思えなくもないので、出てくるのがイヤってほどのキャラってんでもないか。
ま、番組次第、ドラマ次第、映画次第、ってことで。
約三十の嘘』ならば、映画自体がよいので、合格。(他の人でもいいけどNe.)
伴杏里は上手くはないけど、出演者も少ない中でも観ていられるし、細かいことは言わない、
充分充分。映画よければ総て良し。
中谷美紀、よかったなあ。セリフまわしとかさ。表情とか。演出の賜物なんだろうなぁ。
なんだか至極あたりまえのことを言ってるような気がするが。
で、監督はたぶん、ああした整ったスッキリ顔が好きなのかも知れない。瀬戸朝香しかり。
そして彼女に限らず、着てる物、調度、ヘアスタイル等、センスよく、しかも
押し付けがましくないのは相変わらずで、そこらへんも観てて気持ちいいポイント。
ラストの、空撮で陽に照り映える海と向こうに見える山々、それに橋や町、などのショットもよかった。
椎名桔平は観ていて一番頼もしく見えた。役どころとしては、そうじゃないんだけどさ。
田辺誠一は彼の監督作『ライフ・イズ・ジャーニー』観て好感を持てたし、
今回の役者としての彼もやっぱよかった。
約三十の嘘』はあれかな、ビデオ録り、アフレコに見えた。
だからどうってんじゃなくて、そうかなあ、って。ちょっと言ってみたかっただけ。
(おれは原理主義者じゃないからね。映画なんてどう撮ろうと、
どう観ようとどーでもいーよーなもんだもん。たかが映画だし。)
大谷健太郎監督の映画ってこれと『とらばいゆ』の2本を観たきりだけど、
俳優の感じ、そして画面全体を覆う空気みたいなもの、そういったものが
おれの好みなんだよな。つまりは。だから観てて気持ちいい。
それがあれば、とりあえずOK。
その他の細かい注文のあれこれは結局、おれにとっては付け足しで、
その出来不出来は特に問わない、出来がよければそれに越したことはない程度のこと。
そんな感じかしら。
約三十の嘘』は元々他人の脚本で、話が展開するのも列車の中という制約もあるので、
もっぱらにカットを割ったつくりになっていて、それはもちろん正解なんだけど、
ただ欲を言えば、『とらばいゆ』で印象的だったワンシーン・ワンカットがまた観たかったなあ。
でもこの映画でそれやっちゃったらアウトだったかも知れないけど。
(ワンシーン・ワンカット自体はもしかしてあったのかも知れないけど、
少なくともそれを押して、見せ場にしているシーンはなかった模様。)