國家は私達から、乙女の夢まで、取上げてしまふのでせうか。

松江哲明Pt.4

おれはそういえばバクシーシ山下は何本か見てるが、カンパニー松尾は1本見たか、見ないかくらいで(勿体無いことした)、更に、その辺見たのも10年以上は軽く前で、その後のAV界の動向は殆ど知らない。彼らのような人たちが未だ活躍している一方で、その後の人材についてはどうなってんだろう?あるいはあまり出て来てないのかしら。てゆーか、逸材はいるのかも知れないけれども、パイオニアってのはやっぱそれだけスゴイってことでもあるよな。
それにアダルトビデオというジャンル、商売自体が随分と変容もしているだろうしなあ。ネットなんか、昔はなかったわけだしさ。もちろん。ビデオ屋=アダルトっていうのも、もうないしね。イメージとしても、実体としても。昔は仕入れ値が唯一安いのはアダルトだけだったからな。それでいて回転率がいいので、ビデオ屋で儲けを出すには欠かせないものだった。いまでもそういう傾向はないことはないだろうけれども、昔以上に一般作品が安くもなったし、レンタルビデオってものが定着もしたので、きっと様子も変わったことだろう。
『アイデンティティ』、花岡じったマイケル・ジャクソンが好きだっていうのがなんかよかったなあ。というか、女の子2人よりも彼の方が見てて印象に残った。
父親とは気が合わず、でも同居、そして彼の部屋にはマイケルの他、ブルース・リーにデカパイのおねーちゃんの写真、それに日野原重明の本とかあって、なんかよかったなあ。ああいう感じ、なんていったらいいんだろう。親しい光景なんだ。どこか。
バクシーシ山下の『私が女優になった理由 望郷編』でも彼は出て来るので、監督は果たしてあれを見たことがあって、それも少しは頭にあって、彼の起用にもなっているのかしら、とは見ている間も思っていたら、やはり『望郷編』、この映画とのつながりはともかくも、見ていたとのことをコメントしてもらい、納得。
中国人の杏奈ちゃんの前に出て来る女の子、相川ひろみ、彼女が生まれたのが尾道らしく、かつて住んでいたあたりに訪ねていくんだが、尾道といえば、もうこれは日本一乳首に拘る映画監督、大林宣彦を想起せずにいるのはちょっと無理だ。せっかくなら、そこに出ていた素人男優さん(素人とはいえ、見事なタイミングで顔射など決めるのは見ててちょっと感心)と男女入れ替わったりして欲しかったが、それはまったくべつの映画、べつの話、つうかなに言ってんだ、おれは。ラヴコメが好き過ぎる。
雨の日に街中を走る車のフロントガラス越しに撮った映像は、時折雨滴がガラスに滲むのが実によく、そのショットが長くつづくのも好ましかった。もうひとつ印象的だったのは相川ひろみがかつて住んでいた町の通りを歩いている時だったか、雲がいくつか見えるような青空を下から見上げるように撮ったショットがあって、それもよかったなぁ。それにまた、昔懐かしい町、そんなわけで「ちょっと浸って来ていいよ」って監督に云われて撮影班から離れて向こうの方にひとり行く彼女を撮ったショットも好きだった。