國家は私達から、乙女の夢まで、取上げてしまふのでせうか。

鈴木清順

Bebop Years

Bebop Years


すべてが狂ってる [DVD]

すべてが狂ってる [DVD]


セックス!ヴァイオレンス!モダンジャズ
ハイティーンの危険な青春!
無軌道な若者たちの驚愕の生態!
すべて狂ってる!
・・・てな感じの映画で、これは1960年の作品。安保の年ですな。
ストーリーは安いし、セリフはヒドイし、話はバランバランでテキトー、
(脚本は星川清司だったりするが、)正にエクスプロイテーション・フィルム、
ハダカと暴力で客を当て込む類の、企画自体がそもそも安い、でもテーマあり気、
だからこそのエクスプロイテーションか、ケシカラン!とか、ヤングだってかわいそう!とか、
でもって、鈴木清順っぽいトコがそこかしこに!
これはあれだよ、ヌーヴェル・ヴァーグとかとは違う!
清順ショット!
なにやってんの、この人?って感じ!
だってなんか葉っぱで口周り覆ってみたりするしさ。
ところどころ、なんかヘンチクリンなカメラワークと繋ぎ方したりしてて、
それでいてシネフィルなそれとはなんか違い、しかもスタイリッシュとかそういうのとも
ちょっと違う。なんかヘン。そうとしか云えない。
マネしてもださいか、スタイリッシュになっちまうかのどっちかだ。
川地民夫に絡む2人の女性のうち、ひとり、禰津良子(読みがわからない)、
このオネーチャンがスッキリ顔の気の強げなイイ女!鈴木清順好み!
おれもよかったです。
そんで一瞬、ビーチクが!まだ1960年なのに!でもパンツはでかい!そんな時代。
この女優さん、早々に引退しちゃって、プロフィールもロクにない。まこと勿体無い。逸材なのに。
(「ネヅリョウコ」らしい。読み。)
で、いつから清順調になるんだろうなあ。この「すべてが狂ってる」では既にそうなってるし。
転機はどの作品なんでしょう。ハスミンとかがオシャベリしてる鈴木清順の分厚い本とか
読んだらわかりそうだ。近くの図書館にあるから、今度借りて来るわ。
「野獣の青春」でドーンと来た、っていうのは小林信彦も書いてるし、定説だけど、
それ以前のちょこちょこキテるあたりを確かめたいゎ。
以前日テレで夜中に鈴木清順特集やった時(初期のめずらしいの中心だった)に
ちゃんと全部録画して、観とけばよかった。あん時は他に見るもの、録画するものでもあったのか、
松本清張原作の「影なき声」しか見なかったのだった。しくじった。他のも観ときゃよかったよ。
「影なき声」はオーソドックスに撮ってあったと思う。
そういや「すべてが狂ってる」、確かに安い話だけど、なんか話がバラバラな感じがするのは
もしかして清順マジックのせい?ストーリーよりも画面に重点が行き気味の結果なのかしら?
やっぱさあ、このへん観てると「ピストルオペラ」とか「オペレッタ狸御殿」とか
ぬるくてなあ。なんかガツンと来ない。好きにやり過ぎで弛緩してる印象。
スタジオ・システムの中でこそ、ってのはやっぱ大きいのだろうし、
あと、80年代の「ツィゴイネルワイゼン」とかそのへんはまだ気合充分で
観るだに緊張感があっていいし、なんつっても見応えあってグイと惹きつけられるし、
で、そこには長年撮れずにいて溜まってたもんとか、ずっとずっとやりたかったテーマとか、
スタジオ・システムを離れてこそ、出来たあれこれとか、
そういう濃密さみたいなもんがあったのだろうとか推察。
「すべてが狂ってる」、坂本九がちょいと出て来て、それは演技なし、歌だけ、
英語の歌、その歌いっぷりがすげえカッコイイ。ソウルフル。シビレルネ。
(てか、坂本九自体がデヴュー前には川崎周辺をシメてたCHO-!!!ワルだったらしいので、
彼のこと、映画にすればよかったのに。したらほんとに無軌道な青春!)
音楽でいえばサントラ、三保敬太郎と前田憲男がやってる一連のジャズ、こいつがまたイカシてる。
「すべてが狂ってる」と云えば、なんつっても1977年の作品「悲愁物語」、
これこそホントすべてが狂ってる、のでDVD化希望。
「すべてが狂ってる」、吉永小百合ちゃんも出ています。
キューポラのある街」と違って、ええとこのお嬢さん。カワイイ。