國家は私達から、乙女の夢まで、取上げてしまふのでせうか。

ボブ・ディラン

カエターノ・ヴェローゾによる「It's Alright, Ma」が非常によろしい。

Before We Were So..

Before We Were So..


↑このどう考えても地味としかいいようのないアニマルズのアルバムに入っている
「t's All Over Now Baby Blue」、これがまたすげーいいんだよなあ。
で、「ノー・ディレクション・ホーム」の感想を書いてないのをちょいと思い出したので書いてみる。
ええと。なんだっけ。
ディランて、デヴューの頃から随分と映像が残ってるよなあ。
それはたぶん、当時相当な話題性のある人だった、ってことなのでしょう。
ミュージシャン、というより、ニュース向きの人みたいな。
そんなわけで「Don't Look Back」なんてのもあったけど、この「ノー・ディレクション・ホーム」じゃ、
Don't Look Back [DVD] [Import]

Don't Look Back [DVD] [Import]


例のエレキやるんで野次飛ばされて、それに応えて「I don't believe you」だなんて言う
ディランがちゃんと見れる。そんな歴史的なもんが、ちゃんと映像が残ってる、
ってなんか不思議。当時は今と違い、ビデオもないし、有名ミュージシャンといっても、
そんなやたらに映像を撮る習慣はなかったろうし、そんな時代でもディランは
ドキュメンタリー作家に追っかけられるようなタイプの人で、こうしてお蔵だしみたいな
貴重なもんが見れてしまうのだからありがたい。でももう21世紀だ。
時代が近いほど、こういうものは見れない。例えばドアーズだって、ビデオが一般に
普及した80年代になって、ようやく、彼らの動く姿を一般に見れるようにはなったわけで、
彼らが実際に活躍してた60年代や、それからの10年以上の間、写真以外で、
ドアーズなんてまず見ることはなかったわけだから。そんで初めてドアーズの動いてる姿、
エド・サリヴァン・ショーとかのやつ、を見た時は、これが意外と初めて見た気がしなかったんだよな。
当時のこととて、(LPの)ジャケット睨みながら聞いて、いくつかの写真を見、
そして松村(雄策)さんのドアーズについての文章とか読んだりしてるうちに、
おれの脳みその中で彼らは既に何回も何十回も演奏を見せてくれてたので、
いざ動くドアーズを見ても、感動の一方で、なんだかあたりまえでもあったのでした。
おれが見たのは吉祥寺のバウスシアター、午前11時からの回で、それほどの客はなく、
並んでもおらず、席は余裕だった。(ちなみに2回目以降の回からは整理券になる。)
時間になるまでおれは劇場の真ん前にあるモスバーガーでココアを聞こし召していた。
モスガーバー、ココア、美味いよね!
館内は非常に小さく、そして映画は3時間半ほどあるのだが、途中休憩が10分入る。
それを知らず、休憩の少し前に便所に行っちゃったよ。
トイレはでも、脇にカーテンがあり、そのすぐ向こうなので、
上映中でもこれが結構トイレに立ち易いのがよろしい。
おれは観に行った日は調子がよく、トイレも気にならなかったんだが、体調次第では
とてもションベンが近くなり、ひどい時はさっき行ったばっかしでもまたしたくなるくらい、
そんなわけで、長い映画で、便所への交通がよろしいのは好ましい。
でも実際には中々席は立てないんだけどね。タイミングが見つけられない。
途中で僅かな時間でも抜けるのはやっぱヤだしさ。
でもこの「ノー・ディレクション・ホーム」はふつうにインタヴューやなんかで構成される
ドキュメンタリーなので、そんな緊張して見る必要もなく、「ゆきゆきて神軍」じゃ、
ちょいと席は外せない、便所にも行ける。
以前、かつてボブ・ディランが初来日した際のドキュメンタリーをNHKアーカイヴスでやってて、
そん時はもう既に77年くらいだったと思うけど、日本だと70年代あたりじゃまだ
ロックに対しての理解ってのが世間にはほぼゼロで、そんなわけで、記者会見でも
プロテストがどうしたとの質問ばかりが為され、それが逆に今見るとなんとも趣き
だったりはしたのだけれど、それがディラン初来日を遡ること10年、彼の地、
イギリスやらアメリカやらフランスやらでも、殆どそんな感じの会見になっちゃってるのでした。
大体、アコースティックをエレキに換えて大騒ぎ、って事自体が、もう今じゃさっぱり
理解できないもんなあ。そんな当時の不思議を見れるのが「ノー・ディレクション・ホーム」。
見当違いの受け取られ方、質問、野次、等々にすっかりうんざり、ついにはライヴ
やんなくなっちゃうまで(・・・すまん、ネタバレ)を追ったのがこの映画でした。
そんでオデッタとかその他(いっぱい出て来て、知らない名前ばっかなので、憶えてない)
ミュージシャン大勢出て来て、アメリカ音楽史的にめずらしい映像がいっぱい観れて、
そんな点でもお得です。DVDになった日には是非オススメ。
あ。あとディランが結構あちこちからレコードパクって、もちろん大概返しゃしない、
それで貴重な伝承曲とかいっぱい仕入れて、自分のものにしてった(ダブル・ミーニング)
といういい話が聞けたのもよかったです。
あとミソになるロンドン公演、バックはドラムがレヴォン・ヘルムじゃないザ・バンドですが
当時は単にディランのバックバンドにしか過ぎないのでたまにオマケ程度で映るくらい
なのがちょっと惜しいところ。ロビー・ロバートソン(現在、まだそうなのかどうか知らんけど、
ドリームワークスの重役とかの人。)はそれでもリード・ギターなので割りに映ります。
でもガース・ハドソンとか、リチャード・マニュエルとか、リック・ダンコとかはあんまり。
むしろそっちが観たいけど、そりゃまあ無理。
そうしたメンバーの映り具合ってだけじゃなく、当時って、ロックとかのライヴの
カメラワークや編集がまだ鈍くさくって、見たいところが見えないのがデフォルト、
って事情もまたある。なんでそこ映すかなー、みたいな感じ。
そこ、顔じゃなくて手元が見たいんだよ、みたいな。
そして、66年にはこうしてディランもビートルズもライヴ止めちゃうし、
ストーンズだって、67、8年あたりはライヴとかやってないんじゃないか。知らんけど。
そんでそこいらへんからロックのライヴの様相は変わってくるわけだし、
66年まではまだ、なんつうか、歌謡ショーだよな、どっちかっちゃ、
それが67年のサイケブームあたりから、インプロヴィゼーションとかを見せるようにも
なってったのだろうし、ライヴ機材の発達もあるだろうし、一方でスタジオでの録音作業自体の変化、
レコーディングの複雑化などもあって、そこらへん、ライヴとのバランスが難しくなって
来たのかも知れん。そこいらの技術的なことについてちっと知りたい気もする。
67、8年ぐらい、でもザ・フーはライヴを精力的に続けていた筈で、ビートルズとか休んでる、
その隙間にってのもあったのかなあ、それもあってレコーディングにも集中出来ず、
アルバムの出来がどこか半端な感じにもなったとか、どっかで読んだ気もする。
いや、当時のアルバムだってそれぞれに素晴らしいけれど、ただ、ストーンズビートルズ
こと考えると、まだ模索中みたいな感じもするし、あとサウンド自体をあまり練ることが
出来なかったとかなんとかいう話も聞いた。(聞いた話を鵜呑みにしちゃいけないが、ともかく。)
それの最たるものが「トミー」で、アルバムの構想も曲もよいけれど、サウンドにもうひとつ迫力がなく、
そればかりが残念とか言うのは定説(もちろん「定説」というのも疑う余地はあるが、
ここはそれ、話の都合上、むずかしいことは言わない。)。
ちなみにおれは「トミー」、大好きだ。それに今出てるのとかは音の方、
だいぶん向上させてあるはず。