國家は私達から、乙女の夢まで、取上げてしまふのでせうか。

名画座

記憶力にまったく欠けるおれは学生時代、どこにどんな名前の名画座があったか、そこで
なにを観たのか、大概憶えていないんだけど、そこらへんが最近チョコっと気になる
ような気もするので、この際「ぴあ」のバックナンバーとか欲しいかも、とかちょろっと
思ったりした。1981〜87年ぐらいのかなあ。何冊かあったら、結構楽しめそう。
グリコで出してくんないかな。もし出ても字がちいちゃすぎて、字が潰れちゃってて、
読めないけど。昔はあれっすよ、ロードショー、1本きり、なんてのはまず観に行かなかったよ。
カネないもん。勿体ないし。これはどうしても、ってのくらいだよな。行くとしたら。
いまはまず2本立て以上ってのはないので、ヤングな諸君は3本立てだなんて、
ちょっと耐えられないんじゃなかろうか。だって丸々一日、映画に取られちゃうんだよ?!
時間がもったいない!って思っちゃうよね。きっと。三鷹オスカーでソ連映画4本立て、
なんて死にそうな番組、誰だってヤだよね。でもほんとにそんなことやってたんだから。昔は。
もちろんおれが学生の頃より更に昔、そのまた昔、なんてのはどんなだったかは知らんので、
おれの知ってる範囲で話はつづくけど、名画座は3本立てが基本、600円〜800円くらい?
じゃなかったか。2本立てだと、なんか損した気がするので、ちょっと敬遠した。
映画ってのは3本立てだと思ってた。当時。けど、それだと当然観たことのある映画とか
重なるのはしょっちゅう。で、もちろん3本共観るんだよ。同じカネ出す以上は。
もったいないじゃん。だから最近書いたように、昔は同じ映画、2度3度観るのは意識せずとも
当たり前だった。成り行き上、どうしたってそうなる。あと、いまの感覚だとレンタルが
出るのを待つようなのといっしょかなあ、ロードショーに掛かるといわゆる2番館、
3番館落ちするのをじっと待ってた。名画座落ち、ね。要は。あとあれだ、名画座、
ってのは映画を観る、ってだけじゃなくて、暇潰しの場所だった。安いしさ、第一。
600円とかそんな程度で、長い時間、暗い中、椅子の上でだらだら出来るんだもん。
サラリーマンの憩いの場所でもありました。昼間、新宿昭和館の地下、エロ映画やってる方
(当時、おれはヤクザ映画に全く興味がなかったので、地上階の方には行かず、時間が
あるととりあえず、そこに、地下の方に行く事が多かった。)に行くとスーツ着た人が
いっぱいいたもんだった。マジメに観てる人もいたけど、なんとなく観てる人も多いし、
寝てる人も当然いる。なんかよかったなあ。あの感じ。だらだらしたテキトーな感じが。
雰囲気が。いまはケータイとかあるからね。世知辛いですよ。いい加減でいいじゃんねえ。
外回りなんて。おれはそんな仕事したことないけどさ。
そんなわけで昔の人は大して映画に興味のない人でも名画座ってのはカネのない若い奴には
もってこいの場所だったので、娯楽も今より少ないし、カラオケだってないしさ、
そこそこ映画を観てたりする。いまは映画に興味がないと、ほんと全く観てないような気もする。
「なんとなく映画館に行く」ってことは今、ないもんね。そもそも。なんか時間あるから、
とりあえず映画館にでも入っておくか、みたいなさ。