國家は私達から、乙女の夢まで、取上げてしまふのでせうか。

白線流し

「ほんとにつらい時、ひとりでいなくていいよ。」
これ、音楽が岩代太郎だったんだ。昨日初めて気がついた。
先日の「レイクサイドマーダーケース」では「胸焼けのする」とは感じたが、
確かにここでも岩代太郎、確かに曲想が重い、でも内容にあってるのでよかった。
大体、おれが「岩代太郎」の名を意識したのは「殺人の追憶」で、
あれではむしろ音楽には感心したのだった。
クレジットで彼の名前を確認して、この名前ちょっと覚えとこっ、て思ったりもしたのだった。
あたりまえだが映画次第、ドラマ次第。音楽。
白線流し」はこれが初めて放送された当時、「RO」で松村(雄策)さんが
「いまどきこんな高校生もいないだろうけど、でも、いいドラマだ、感動する」
といったようなことを書いていて、でもそのとき、おれは松村さんの文章読んだきり、
実際見たのは割りに最近のはなし。で、しばらくハマってた。
脚本家を目指す馬渕英里何が結婚式場で配膳のバイトをしてるのが、
おれにとってはなんともリアルで、なんか切なかったよ。
学生時代、もう20年は前だ、当時おれは南青山にある結婚式場で
配膳(といっても更に裏方のそれ)のバイトをしていて、そういう場所の空気がわかるので、
妙に実感があったのでした。
川や道路、そういったロケ風景がよかった。空気の澄んだ感じが。
今回は意外と中村竜くんが活躍していて、彼、よかった。
前回のスペシャルの時は、なんかもうひとつ、だったんだけど、今回はよかった。
「七倉園子」も、もうゴジラなんかとつきあって、あんなことやこんなことをして
汚れてしまったと思うと、歳月は時に悲しい。
柏原崇くんも元気になってよかった。
それに昔にくらべるとずっとたくましい感じになってました。彼。
線の細い優等生役がかつてはよく似合っていたのに。
長瀬くんはいつ、どこへ出て来ても常によく、もちろんここでもよい。
寡黙で慎ましいここでの彼も又、いつもながらに素敵。
(今回は彼だけほぼ別録りなんじゃないかとか、
そういう大人の事情にさっき気がついてしまったことは内緒だ。)
(でもその事情を上手く活かした話と演出になっていて、結果、よかった。云うことはない。)
話には欠点がいくつもあるし、元々続編制作をするって時点で無理もあり、
続編の中、特に長瀬智也とナナクラが同棲したりするあたりは
ちょっと苦しかったけど、今回は最後ということもあってか、
しんみりとした進行で、みな大人にもなっていて、その彼らの生活の描写がよく、
説明的なシーンだのもあったにせよ、そんな欠点をしのいで雰囲気に浸れたのでよかったです。
演出がよいのだと思う。流れには多少の無理があっても、部分部分がいいんだもん。
いくつかのよいシーン、それがあれば、おれには充分。
切なく、悲しい、信本敬子はいつもそんな風で、「ウルフズレイン」の主人公と
白線流し」の長瀬くんはほぼ共通しており、仲間たちの物語という点もそう、
いつもなにか失われたような感じがつきまとい、そして、厳しく、やりきれない現実と
いつかどこかにある理想、そのロマンチックさ加減が、おれは好き。
そういえば大森美香信本敬子、両人とも、SFが書ける(信本敬子はむしろ
SF寄りではあるし、大森美香は「漂流教室」だけではあるとはいえ)、
いつかどこかにある理想を信じている、けれども一方、どうにもならない、
取り返しのつかない現実というものも十全にわかってもいる、そういう点では通じている。